
新人戦最終日に見せた「もう新人じゃないゴルフ」
この日の藤本愛菜選手のゴルフは、「新人戦」という言葉が最後までしっくり来ませんでした。
こんにちは、りなです🏌️♀️
新人プロだけが出場できる JLPGA新人戦 加賀電子カップ。
毎年この大会を見ていると、自然とこう思います。
「この中から、近いうちにツアーで勝つ選手が出てくるな」
今年、その感覚を一番強く覚えたのが藤本愛菜選手でした。
12月12日、千葉県・グレートアイランド倶楽部。
強風が吹きつけるタフな最終日、藤本選手は通算9アンダーでフィニッシュ。
前日2位からの逆転で、プロ初優勝を飾りました。
2位の伊藤愛華選手に5打差をつける、内容の濃い勝利です。
最終日は、藤本選手と伊藤選手がスコアを並べたまま進む、息の詰まる展開でした。
風の影響でバーディーが簡単には取れず、
少しの判断ミスが、そのままスコアに跳ね返ってくるコンディション。
新人戦とは思えないほど、コース全体に緊張感が漂っていました。
流れが大きく動いたのは15番パー5。
通算8アンダーで並んで迎えたこのホールで、藤本選手は第2打を残り約98ヤード地点へ運びます。
「私にとって一番得意な距離が100ヤードなんです」
本人がそう語る通り、まさに“自分の距離”。
ただ、この日は強風の影響もあり、ここまで誰もバーディーを奪えていませんでした。
それでも藤本選手は、PWで放った第3打をピン上2メートルにピタリ。
そのバーディーパットを沈め、単独首位に立ちます。
この場面を見ていて感じたのは、
自分の武器を信じ切れている選手は、やっぱり強いということでした。
続く16番で伊藤選手がボギー。
差は2打に広がりますが、勝負はまだ終わりません。
17番パー3、18番パー4は、どちらもグリーン左に池が待つ難ホール。
しかもピンは左サイド。
攻めたくなる気持ちと、安全に行く判断がせめぎ合う場面でした。
そんな中、藤本選手はこう語っています。
「あえてピンの位置を見ないでプレーしました」
狙うより、まずグリーンに乗せる。
勝つために必要な選択を、淡々と積み重ねていくゴルフでした。
一方、追う立場となった伊藤選手は攻めるしかなく、
池につかまる場面も。
この対照的な判断が、結果的に5打差という数字につながります。
藤本選手の最終日スコアは70。
3バーディー、1ボギーで、この日のベストスコアタイでした。
ただ、私が一番すごいと感じたのは、スコア以上に
**「最後まで崩れなかったこと」**です。
風が強くても、ピンが難しくても、
やるべきことを変えない。
新人戦とは思えない落ち着きと完成度でした。
藤本選手は、昨年のプロテストで一度不合格を経験しています。
合格ラインに2打届かず、悔しさを味わいました。
そこから12月から4月まで、ほぼトレーニングだけの日々。
タイヤを引き、担ぎ、下半身を徹底的に鍛える。
「1日も休まず続けた」という言葉からは、相当な覚悟が伝わってきます。
この積み重ねが、
強風の最終日でもブレないショットと、
終盤の冷静なマネジメントにつながっているのは間違いありません。
もともと藤本選手は、ジュニア・アマ時代から世代トップクラスとして注目されてきました。
全国大会優勝、エリエールレディスでのホールインワン、
アジアアマでは日本勢最上位の9位。
今回の新人戦優勝は、
突然の快挙ではなく、積み重ねの延長線にあった結果だと感じます。
QTファイナルステージ21位。
来季前半戦はほぼ全試合に出場できる立場ですが、
ここからが本当の勝負です。
オフのテーマはパッティング強化。
「カップを10センチオーバーさせるパット」を意識しながら、
次の舞台を見据えています。
新人戦は通過点。
でも、この加賀電子カップで見せた藤本愛菜選手のゴルフは、
確実にその先につながる内容でした。
これからツアーで藤本愛菜選手の名前を見るたび、
私はきっと、この新人戦最終日のゴルフを思い出します。

コメント